明けましてお目出度うございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年は、戦後、原爆投下から80年、神戸阪神大震災から30年と区切りの年でもあります。
現在ある自主申告納税制度は、昭和22年 (1947年)第二次世界大戦後に経済の民主化の一環としてイギリスの経済学者のシャープ博士(シャープ勧告)の指導により採用されました。
戦後のこの時期は、日本経済か疲弊のどん底にあり、インフレがとめどなく進行、所得税の負担は極端に重く、納税者の税務官庁の信頼がなく、職員も不慣れで新制度の実施についても最悪の環境の下で、納税者も無申告、脱税行為は日常茶飯事であったと聞きます。
私は昭和45年に21歳で会計事務所に勤務しましたが、この当時は税理士業界もよく知りませんでしたが、税務職員が大量に退職して税理士になったと知りましたが、この二世が私の同年代で税理士となっているのです。この当時の税務調査官は、威圧的な税務調査があった印象があります。
昭和40年代は、クロヨン・トーゴーサンピンゼロと言われる不公平税制が論議もされていました。
クロヨンとは、所得税の負担割合がサラリーマンは9(ク)、自営業者は6(ロク)、農業所得者は4(ヨン)となっており、不公平が生じていることを示す俗語です。
サラリーマンはトー(10)、自営業者ゴー(5)、農業所得者サン(3)、政治家や宗教家はピン(1)、ゼロ(0)ともいう俗語もありました。この頃より、「法人なり」として主に有限会社・株式会社の法人設立をして、同族会社の代表・役員に役員報酬を支給する節税方法が流行しました。
税務調査と査察の違いは、税務調査は、国税局、税務署が行う所得税・法人税に規定されている質問検査権により「任意」のもので、通常は事前に連絡があります。
査察は、国税局査察部が行うもので、国税犯則取締法に基づく「強制」的な調査で、臨検、捜査、差押等の権限があり、悪質な脱税を摘発することが目的です。
査察制度は悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
事前の連絡はなく、相手方の同意を必要としないで、会社や社長、役員の家に一斉に捜査員がなだれ込みます。国税局査察部のことを隠語で査察の「査」を丸で囲むことから、「マルサ」と言います。以前伊丹十三監督の「マルサの女」という映画がありましたが、まさにリアルに描かれていました。
税務調査でも、会社規模の大きいところ又は指定業種は、国税局が行いますが、あくまで任意調査ではありますが、さらに急成長した会社には国税局に資料調査課という部署がありますが、事前連絡がなく会社や役員の家に一斉に調査をすることはあります。隠語で資料調査課の「料」の米の一部の字から「米・コメ」といいます。
総合調査というものもあり、会社グループとグループ会社の役員の法人税、所得税、所得税、相続税と管轄の税務署が一斉に調査するものもあります。
査察事件となったら、刑事告訴され、場合によっては逮捕され刑事罰としての罰金、重加算税35%、無申告加算税、延滞税、本税の支払いは、脱税額以上を支払い、何より信用失墜が一番の被害です。また代表者、家族も、ストレスから病気を患い、隠蔽工作等の脱税行為は何の徳もありません。
税務調査の対象となった者の、マークした預金口座の引き出しにATMに行ったときに、顔写真を撮られる仕組みがあり、その写真を見せられた事もありました。
脱税したくなるくらい、法人税、所得税、相続税の負担が大きいという事です。
査察事件
- 建売住宅の販売会社が売上金を計上しなかった事件
私が会計事務所に勤務している時代の査察事件ですが、いきなり会計事務所に査察官二人が来たが、所長が不在であったので、待ってもらうこととしました。
その時点で、どこの会社の査察調査か分からず、想像して会社とは全く違う会社であった。調査対象の会社が想像もしない、まさに青天の霹靂で、あの紳士的な社長の会社と聞いて驚きました。
この当時、顧客の銀行の融資さえ取れれば、建売住宅が飛ぶように売れた時代で、大工、材木屋、銀行の支店長の接待交際費の捻出のために二重帳簿を作り脱税行為があったものと思われます。この当時は、法人税法上の交際費は重課税であったので、交際費を経費としない接待がありました。
査察を経験した社長は皆さん、後で半年前くらいから、尾行されていたと告白していました。査察を経験した人は、毎週調書作成のため国税局に通う事となるので、ストレスからか、ガンを発症しています。
調査官達も、当日の査察はどこの納税者かの情報は一切なく、駅に着いたら国税庁の本部に連絡して、初めて査察対象の納税者を知らされ、踏み込みをするのです。
2.代表者が仲介手数料を会社に計上しなかった事件
裏口入学の仲介手数料を代表取締役の個人が受領して、所得税の申告をしていなかった事件です。この会社は、私が監査役を依頼されていたので、何回か自宅の20メートル離れた道路に東京ナンバーの車が停車していたが、査察の後日わかりましたが、私の行動を監視していた事が、私は朝早く家を出るので車の中で査察官が寝ていました。
この会社の顧問税理士は、国税OBであったが、査察の立ち合いも、折衝も逃げてしないので、結局私が行う事となりました。
勿論、私は代表者個人が行った行為なので、全く知りませんでした。
3.飲食店の脱税行為
査察の後に、私のところに依頼があった事件ですが、顧問税理士が国税局との対応をしてくれないとの事で、国税局の作成した法人税申告書のつ別表だけで判断しました。
脱税指南のコンサルタントへの支払い、売上金の除外での脱税行為でした。
国税局資料調査課の任意調査
- 冠婚葬祭の会社
結婚式、葬儀とは、会館から仕事の依頼があるが、その斡旋手数料を担当者個人が要求されるので、その資金捻出のために、トンネル会社を経由して支払う事となるのです。 - 物品税の調査
国税局の関税部門から突然税務調査があったが、修正申告もなく終わった事件です。
物品税は、消費税導入で廃止になりましたが、贅沢品の貴金属、家具、化粧品に課税されたものですが、毎月の申告・納税と労力も大変でした。
蔵出しといって、製造所から販売会社に移出した製品・数量を税務署に毎月届出書を申請しなければなりませんでした。これは、現在も酒税は同じです。
一個の単価が、少額なので本来物品税が非課税ではないのかと、国税局から言ってきたので、納税会社の社長から𠮟責を受けたが、これは国税局の誤りで、通達に一個単位でなく、販売が箱の数量で判断するというものと、国税局に指摘した事を思い出しました。 - 急成長した会社の調査
急成長する会社は必ずといってこの資料調査課の任意調査はあります。
予想はしていても、いざ調査の立ち合いといっても、連絡なく数人の調査官が同族一族の会社、個人宅と同時に一斉に来るので対応が大変です。
上場を目指している会社というのは、以前は同族一族の持ち株の割合の制限があり、株主の持ち株割合を調整しなければならず、同族一族、社員の持ち株等の整理が必要となります。西武グループが、上場廃止となったのは、同族一族の持ち株を隠蔽したのが原因です。
総合調査の任意調査
- 任意調査の途中で中止となった会社
総合調査の対象となっていた会社であったため、突然調査の中止となったが、総合調査としてグループ会社全社の法人税、所得税の調査として二重の手間が掛かった案件 - グループ会社、代表者個人で10件以上の総合調査
総合調査は、主税務署が税務調査を指示するものですが、税務署も三税務署と対応が一人ではできず、会社の職員、事務所の職員を分散して対応しました。
相続開始も間近い事を察知しての総合調査と考えたのか、法人税、所得税、相続税と個人の財産、会社と個人の貸借関係と事前に把握したかった総合調査と思っています。
任意調査でのエピソード
- 国税局の相続税調査
被相続人の突然の死であったので、特に預金が銀行の残高証明書だけでは分からず、国税局に職権で銀行の残高を調べてもらったが、不明の預金が一憶くらい判明したが、修正申告をしてもおつりがあるくらいでした。 - 相続税で箪笥預金が税務署の調査で確認した事件
二件の相続税の調査で、現金として五千万円は、申告しているので、脱税ではありませんが、現物を確認する事となり、本当に自宅の台所、押し入れに保管していた案件です。
盗難、災害、火災となったら銀行預金が安全と思われますが手元にあると安心すると回答されました。
会社で現金三千万計上されているが、現物を調査する事となり、金庫を開けたら現存していました。急に必要になるので、いつも金庫に保管しているのです。 - 申告時と税務調査時では期間に、土地の形状が変化している事件
税務調査で居住用土地建物の三千万円控除を受けていた物件を取り壊して隣に建て替えて土地が隣で、税務調査時では住所の一番地違いであったので、説明するのですが、納税者が緊張して逆の発言をするので、証明するのに大変でした。 - 税務署の統括官の同一人物であった事件
不動産経営の個人の所得税調査で、税務署へ打ち合わせ時に統括官の上席へのパワハラがすごく納税者が上席に同情してか、統括官に対立姿勢をみせた。
その後、その統括官が再任用されて調査官として偶然にも別の税務署、別の納税者調査で、私に対して嫌がらせとも思える態度でした。この調査は、私が申告した案件でなく、税務調査だけを依頼された案件でしたが、私も声を荒げるほど元統括官の調査官と言い争いをしましたが、上司の統括官がコピーをとるように指示したとき、其のすきにその統括官が小関さんご迷惑をかけて申し訳ありませんと謝罪して、後は統括官がまとめることで終了しました。その元統括官は一年で他の税務署に異動となっていました。
別の案件で、無申告者が相談してきた税務署の管轄部署が同一というおまけ付きです。 - バブル時代の相続税調査
相続開始前3年以内は、相続税評価でなく、取得価格で計上するという措置法がありました。時価と相続税評価が乖離していたので、借入して土地建物を取得する節税対策が節税コンサルタント、不動産会社が販売目的にしていた時代です。
これは、私の失敗の事件ですが、借地権は本来借地権割合を控除できるのであるが、相続開始前3年以内は借地権割合控除できないのに取得価格から借地権割合控除して申告してしまい修正する事となった事件。
私は、そのような節税対策には反対の意見をもっていたが、相談に来た時すでに不動産会社と契約していたので、違約金も大変なので進めましたが、バブル崩壊して借金返済で大変でした。
被相続人の父が取得して3年までの一か月前に亡くなり、家族に「3年生きられなく申し訳ない」と言って亡くなったことは、脳裏から離れない案件です。
6.以前は、高額納税者は税務署の掲示板に名前、納税額が掲載された。
寄付を強要、周りからの妬み・嫉妬から取引中止という弊害がありました。
源泉徴収税額を多く引いておいて、3月15日の期限内申告をせず、5月末くらいの時期に申告をしても、還付をうけるので、延滞是、加算金も徴収されませんので、あえて期限後申告を行っていた納税者もおりました。掲示板の納税者の名前は、期限内申告をした名前が掲載されます。
7.相続の分割のやり直し
相続人全員による、分割協議書の押印も終わり、相続税の期限内申告も完了して、しばらくして、後日分割の不満を言ってきた相続人がいました。期限内申告の10ケ月以内であれば、やり直し、申告済であれば、訂正申告もありえますが、不可能であった。
結局、贈与とすることで、不動産を移転することとなったが、多大な贈与税を支払って移転することとなりました。
8.相続開始前三年以内は贈与加算を免れた
相続開始前三年以内は、加算しなければならないが、三年1ケ月以前で会ったので、あえて相続財産に加算しないように、贈与税の期限後申告をしました。
これは、かなりの相続税が発生する納税者であったので、他の納税者の相続税増額で迷惑をかけたくないという、趣旨からの処理です。
被相続人から、身障者の孫への生前に贈与という事実を知られたくないという孫の母の意向からです。
9.コロナ時国税局任意の中断
国税調査官二人で、予定では一ケ月間という日程であったがコロナウイルス感染で、非常事態宣言となり、二日間だけで納税者の会社での訪問実態調査は終わったが、後は要求された資料、USBでの総勘定元帳の提出だけの調査となった。でも、修正事項はないという是認通知を頂きました。
税務調査の対象は、妬みや嫌がらせの内部告発や垂れ込みもかなりの多いと聞きます。
まだまだありますが、現存する当事者もあり、差しさわりのある案件は、控えました。
お金を使わない、「節税」はありませんので、先行設備投資、人材投資がありますが、人材にお金をも使いたくても、会社に忠誠心のある会社員を探すのが大変です。
令和7年1月31日
小関勝紀